海猫亭日誌

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zoom RSS コンニャク漂流記 星野 博美

<<   作成日時 : 2011/12/17 23:16   >>

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コンニャク屋というのは著者の一族である漁師一家の屋号です。

私は漁師町の生れなのですが、うちの親世代だと人の家の話をする時、名字でなく屋号でその家を呼ぶんですよね。
まあ、田舎だと狭い地域に同じ名字の人間がゴロゴロいるので名字よりも屋号の方が区別がつきやすいということもあるのでしょうけど。

だから冒頭でコンニャク屋という屋号が出てきた時に、漁師町はどこも同じだなあ、と懐かしくなってしまいました。

この本の中で、著者が
「国際結婚と聞けば様々な文化摩擦があるだろうな、と容易に想像がつくが国内でも国際結婚に匹敵するような文化摩擦が引き起こされる場合がある。海の民と山の民、北の民と南の民、というように気候や生活環境、職業や経済環境がまったく異なる場合。漁師と農民というのも異文化の最たる組み合わせの一つだろう」
と述べていますが

「あたしは漁師町の人間だから仕事が早いの。手が早くないと魚が腐っちゃうから」
 という子供の頃よく聞いた母の口癖を思い出しておかしてくなりました。うちは両親ともに漁師の子だったので家庭内文化摩擦はあまりなかったのですが、隣町は農村地帯だったので、地域性の違いはよく聞きましたね。
ほんの少しの距離なのに、やっぱり文化が違うんですよね。

「あそこは農家だからケチなんだよ。使う時にはお金は使わなきゃ」
 というのが漁師町の人間の隣町の人間への評価だったのですが、あちらからすると
「そういう金の使い方をするから漁師町の人間は金が貯まらないだ」
 ということになるのでしょうね。著者のルーツである漁師一族の話を読みながら、ある、ある、と懐かしい気分にひたってしまいました。

ほんと漁師町の人間は、よく働いて、遊び好きで、お金がなくて、現実的なんですよね。著者が長年住んでいた武蔵野市を離れた理由に、ここが自分の場所とは思えなかった、語っていますが、確かに農家より漁師の方が封建制が少ないかもしれない。

海に出た時、どれだけ成果を持って帰れるか、ということには如実に本人の技量が出るから。技量のある人間の価値を認めないと、誰が苦労するのか皆解かっているから。

時化た海へ舟を出し続けたところで魚は獲れない。そんな時は陸に上がる。時代や自然の動きを見極めながら、その都度食える方法を考えていく。そうやって時代に対応しながら細々と生きていった漁師達。

海と共に生きても、海に忠誠は誓わない。工場と共に生きても、工場とともには死なない。著者の父の中に残る漁師気質。

国や文化や言葉を越えた海で生きる人間同士の独特の連帯感。

それより国家公務員という立場を優先した。衝突事故の時の自衛官の行動に冷たい視線が向けられる理由は確かにそれでしょう。

海に生きる者が海の掟よりも陸の掟の方を優先した、という違和感は海に生きてきたものには消せないでしょうから。

出稼ぎ漁が活況だった時代には、そのことに気がつかず放任していたくせに、出稼ぎ漁民が不利な立場に立たされ、数も減少し始めてから、いきなりとてつもない金額を漁民に要求してきた紀州藩への
「いつの時代でもお上というのは時代を読み取る嗅覚が一歩も二歩も遅い」という適切な評価。

免許取得後、練習の為に父親を乗せて車を走らせる著者の、父の頭にある地図は、お得意さんと親戚の家に繋がる道しか書かれていない。これが父の生きてきた世界なのだ。免許を取ったおかげでそれを知ることができた、という言葉。

確かにこれは物語の終わりの為にある本ですね。終わりの為の本だから、全体にトーンが明るいのかもしれません。なくなってしまった愛しい日々が、愛しい記憶が確かにあったのだと語る為の本だから。

この本の最後に3月11日の夜のことが記されているのが、とても象徴的に思えます。
「たとえ、あの波の音さえ永遠でないとしても」
読み終わった後、TONOさんのマンガに描かれていたモノローグの一節を思い出しました。

 
コンニャク屋漂流記
文藝春秋
星野 博美

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