海猫亭日誌

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zoom RSS 住宅喪失 島本 慈子

<<   作成日時 : 2011/07/18 21:44   >>

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2005年の1月に発行された本だから、今読むと少し古いな、と思う部分がないわけではないのですが、基本的な部分は今読んでも古くないと思います。

阪神・淡路大震災によって「家が壊れて住宅ローンが残った」という人達を追跡調査したルポ
「倒壊ー大震災で住宅ローンはどうなったか?」で戦後一貫して展開された持ち家政策の歪みを。

その後書かれた「子会社は叫ぶ」「ルポ解雇」で日本の長期雇用が崩壊していく実態を記録した島本さんが住宅と労働という二つの異なる取材を通して抱いた疑問。

住宅ローンを利用するには、長期間の安定収入が保証される長期雇用が前提となる。
なら長期雇用が破壊されるということは日本の政治は「持ち家政策を捨てた」ということなのだろうか?

この疑問を解く為に取材を続けた結果得た答えは、
98年当時の「みんなが家を買うことで国の景気を良くしましょう」政策から
2004年当時の「家を買える人にはどんどん買ってもらい、買えない人には“家賃を支払う存在”として経済に貢献してもらいましょう」政策への変化。

問題がなかったわけではないが、少なくとも「弱者切り捨て」の発想はなかった持ち家政策から、恥じることなく公然と弱い者は利用するだけ利用するという「弱肉強食の論理」に政策が変化しているという事実。

何につけても経済が優先、住宅政策において国民の居住権は真摯に検討されたことがないという戦後一貫した基本思想に変わりはないとはいえ、この違いは大きいですよね。

確かに敗戦以来、日本の政策は労働においても住宅においてもアメリカをお手本にしてますし、それはそれでいい面もあったけれど、そろそろその発想はやめた方がいいんじゃないかな。

明治期の先人達のやり方がいいとは言いませんが
「この国のやり方は我が国の実情に合わない」
「この国のやり方は我が国も見習うことがある」
と欧米諸国のそれぞれのやり方を見比べて、自国にあった各国の制度をモザイク模様で取り入れていった時代の方が、アメリカだけをお手本ににしてそれに追随していっただけの時代よりもよほど健全だと思います。

この本の中で阪神大震災の被災者にとっての不幸として震災からの復興と雇用破壊の進行がぴったり重なってしまったことがあげられているのですが(日経連が雇用の多様化戦略=長期雇用の削減を打ち出したのが阪神大震災から4カ月後の95年5月)、これ東日本震災後の今読むとくるものがありますね。

震災からの復興と雇用破壊の進行が重なってしまったのが阪神大震災。

「雇用の流動化」という言葉が「転職が容易な社会が作られていくこと」ではなく「人件費削減の為に正社員を減らし、非正規雇用を増やすこと」を指す言葉であることが世の中に知れ渡った後に起こったのが東日本大震災。

「『国会なんか自分には関係ない』というのは大誤解」
と島本さんが力説するのがよく解かる。

国会で作られた沢山の法律が、会社の人員配置を変え、クビ切りの基準を変え、住宅ローンの金利を変え、住まいの日当たりを決め、マンションの建て替えを左右していく。

たしかに法律が決められ制度が施行された後、そんなこと知らないよ、と言っても後の祭りなのでしょう。

「国会(選挙)に興味を持たないということは『大損』」
と断言されても仕方ないと思います。

それにしても国会会議録がインターネットで公開されているとは知らなかった。誰でもいいから気になる国会議員の名前を打ち込んでその発言を検索してみるというのは確かにいい案かもしれません。

「この人はこんないいこと(あるいは悪いこと)を言っていたのか!」
という驚きや発見は選挙の時に役に立ちそうですものね。(記者クラブ制度があるマスコミが政治家の実態を正しく伝えられるとは思えないし)

だって、労働法の審議の時に
「使用者は労働者を解雇することができる」
という文面が含まれた解雇ルールが提出されていたとは知りませんでしたもの。これって戦前への逆戻りでは?

この事をマスコミが報道した覚えがないということは日本の大手マスコミは基本的に強者の側に立つからでしょうね。

この本を読んで思ったのが「戦後の日本ってやっぱりアメリカの植民地なんだな」ということでした。戦後60年経っているんだから、いい加減敗戦のショックから立ち直ればいいのに。

グローバルスタンダートの名のもと、アメリカ型経営を押し付けられても、EU諸国はアメリカの押し付けをそのまま受け入れず、それぞれ自国に合わせた修正を加えているというのに、日本はアメリカの言う通りにしないと資金を調達出来ないという恐怖心から、あっさりとアメリカ型経営に追随。

日本経営者団体連盟(現:日本経団連)は、1995年5月に発表した研究報告で、これからは労働者を次の三つの階層
@ 一番上に置く長期蓄積能力活用型グループ
  (管理職、総合職、技能部門の基幹職といった仕事につく)

A その下の高度専門能力活用型グループ
  (企画・営業・研究家開発といった専門職につく)

B 一番下に置く雇用柔軟型グループ
   一般職、技能部門、販売部門に従事)

に分けて、正社員は一番上の「長期蓄積能力活用型グループ」だけ。それ以外は「期限を区切った有期雇用(臨時雇い)にしていく」と言いきってますし。

官僚も政治家も周囲にいる主流経済学者も皆アメリカナイズされているから、あっさりと国際会計基準として連結キャッシュフロー計算書を導入し、この計算書が導入された目的が
「アメリカの金融業が世界中の株式市場に投資しやすいようにすること」
の意味を深く考えなかった。投資家の利益を確保する為に、現場の人間を切り捨てていく。

そういった考えに基づいて日本の労働市場が塗り替えられた結果が16年後の今ですか。

やっぱり国のトップっで賢く、したたかでなければいけないのね。目の前の100万を惜しんで将来の1億を得る機会を無くしているようなことをしている人がトップだと現場がいくら頑張っても国が傾くわ。

2003年に住宅金融公庫法が改正された時、呼ばれた3人の参考人の意見と、
改正にまつわる談義…住宅金融公庫が廃止された時点で「民間で出来ることは民間へ」という構造改革のスローガンに乗っ取り、住宅ローンの貸付は原則民間の金融機関に任せ、新たな独立行政法人は民間金融機関が「長期で固定金利」の住宅ローンを提供できるように住宅ローンの証券化事業によって後方支援を行う、のあたりも面白かったです。

「住宅ローンの証券化」これってようはサブプライムローンのことですよね?アメリカ経済をメタメタにした。
本家アメリカと書いてあるから、まず間違いはないのでしょうね。あれと同じことを日本でしようとしたのか。

つまり2003年の時点で、日本はアメリカと同じく、同じ住宅を買っても金持ちではなく貧乏人の方が高い値段を支払う方向転換したと。

弱者は支援するものではなく、搾取するものにしたと決めたということですか。

金持ちにはハンディをつけず、貧乏人にハンディをつけるのは市場。
これは当然です。だから全てを市場を委ねる政策は社会の不平等を拡大する危険性もある訳ですが、日本は住宅政策においてそれを選んだ、と。

住宅ローンが破綻して後で、民間の賃貸物件を見つけることが難しく、公的な借家の比率が非常に低い日本で(公的の借家の比率が非常に低いのは日本とアメリカだけで、公的賃貸のウェイトが高いヨーロッパでは力ある人が持ち家を選ぶとか)、そういう政策を取ったと。
ホームレスやネットカフェ難民が増える訳だわ。

「日本の市場にビジネスチャンスを求めるアメリカ」とそれに付随する「日本の産官学」が手をとりあって「アメリカ型新自由主義」へと舵を切ればそうなるかな。

保育所の民営化を巡って総合改革会議にヒアリングに呼ばれた保育の関係者が
「委員のメンバーを知って驚いた。総理の諮問機関の委員が経済界だけなのは何故か?」
「日本経済の活性化の問題と子供の健全育成の問題とをごっちゃまぜに議論していることに無理がある。最初から絡み合う話ではない」
と指摘していますが、本当にいつから日本はこんなに貧乏ったらしい国になったのでしょう。昔の日本は貧乏な国でも貧乏ったらしい国ではなかったのに。

1929年(昭和4年)に完成した新潟の万代橋は1964年の新潟地震の時、竣工間もない昭和大橋の橋げたが落ちても壊れなかったそうです。

阪神大震災の時も昭和初期に作られた古いコンクリート建造物は生き延びたとか。同じ敷地にある小学校の校舎。新しい校舎はつぶれ、古い校舎はつぶれなかった。

経済成長の中で仕事はキャッシュとだけ結びついてきたということ。
「この仕事は何の為にあるのか?」という目的意識が労働の中から薄れてきたということではないだろうか?という島原さんの疑問を裏付けるようなエピソードですね。

労働の劣化は安全性を損ない、社会そのものを劣化されていく。

この言葉の怖さを国の上に立つ人は理解して欲しいな。今の状態を見ると、それはかなり難しいことであるとは思いますけどね。

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