海猫亭日誌

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zoom RSS 山は市場原理主義と闘っている  森を守る文明と壊す文明との対立  安田 喜憲

<<   作成日時 : 2010/04/17 09:58   >>

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文明論としても環境論としても面白い本でした。

子どもの頃読んだ子供向け学習マンガで印象的な話があります。

コロンブスがアメリカ大陸にやってくる前草原はバッファロー達の天国でした。

やがて海の彼方からやってきた白人達は先住民を追い出し、草原を牧場に変えます。
バッファロー達を狩り、巣穴に足を取られて牛が骨を折るからとプレーリードッグ達を目の敵にし、退治する為に毒をまきます。

牛は餌として草原の草を食べ、重い蹄で草原の土を踏み固めます。
プレリードッグ達が生きていた頃はバッファローが蹄で踏み固めても、巣穴を作る為にプレーリードッグ達が土を掘り返してほぐしてくれました。

プレーリードッグ達はもういません。土をほぐしてくれる生き物はもういません。空気の入らない固い土では種は芽吹くことができません。

やがて牛達は草原の草を食いつくし、新たな餌場を求めてカーボーイ達は牛を移動させます。こうしてバッファローをはじめ、様々な生き物達の楽園だった草原は僅かな間に何も住まない荒野になってしまいました。

うろ覚えだけれど、こんな話だったと思います。この話とモンゴルを旅行した時に羊や山羊に食い荒らされて赤茶けた肌をさらす大地を見ていたので、この本の主張するところは、わりと抵抗なくスムーズに読めました。

モンゴルに行こうと決めた時、期待したのは一面の大草原だったのですが、あそこまで砂漠化が進んでいるとは思いませんでした。

社会主義から資本主義へと国是が変わり、モンゴルは経済を立て直そうと必死です。木材を運ぶ貨車を見ました。

「中国へ輸出するんですよ」
 ガイドさんが言います。
「カシミヤを取る為に山羊が増えました」
 資本主義社会です。高く買ってくれるものを作ろうとするのは当然の行為です。モンゴル産のカシミヤは売れます。外国に売って外貨を稼がないといけません。

山に生えていた木が切られ、下草は山羊達が食いつくします。こうしてモンゴルには赤茶けた山が増えていったのかしら?そう思いました。

こういう光景はモンゴルだけでなく、歴史上世界のあちこちで見られた光景なのでしょうね。開拓の歴史は森林破壊の歴史でもあるのだから。

山羊には罪はない。私もそう思います。彼らは餌として生きていく為に草を食べていただけ。だから、彼らを飼い増やし、結果として多くの森を消滅させてしまった人間こそが己の罪を自覚しないといけませんね。

この本を読んだ後だったので、クロマグロ禁輸案の否決がとても興味深かったです。

EU対漁業国&発展途上国。

おお、牧畜乳製品文明・畑作牧畜文明 対 稲作漁撈文明の対決だ。(アラブ諸国も畑作牧畜文明だけど、まあ、それはおいておいて)

禁輸案を認めさせる為に環境団体は開いたパーティに出席したのが欧米諸国ばかりというのは、凄く解りやすいな〜と思いました。

彼らは里山の思想というのがないから人の営みと環境保護、両方を同時に成立させる方法、人と自然が互いに利用しあってWINWINになる方法というのが感覚的に解らないのでしょうね。

なので保護すると決めたら環境保護こそが正義。その為に人の営みがどうなろうと知ったこっちゃない、といった対応をとってしまうのでしょう。

人の営み、環境保護両方大事。自分達が生きていく為には節度を保って生きていく為の糧を分けてもらうこと。我欲に走って必要以上のものを自然から奪えば結果として自分の首を絞めることになる、という文化を持つ国は反発するのでしょうね。

市場原理主義はキリスト教文化から来ている。文化の違う国が市場原理主義にひれ伏すことになれば、一神教の闇に飲み込まれてしまう、という主張は面白かったです。

すごーく納得しやすくて。ああ、やっぱり私も多神教文化圏の人間なんだなあ、と思いました。

知識人ほど一神教文化にひれ伏し、自らの文化を恥じて否定するという意見にも同意。

ちょっと感情に走りすぎでるな、という気がしないでもないのですが見逃せる範囲なので、まあいいでしょう。

どんなものにもプラス面とマイナス面があって、今までは一神教文化のプラス面ばかりが強調され、それを多神教文化のマイナス面と比較することで多神教文化が貶められてきた、ということなのでしょうね。

だから、この本は逆に多神教文化のプラス面と一神教文化のマイナス面を提示しているのでしょう。

「美しい日本列島で、日本語を話し、日本食を食べ、10年も暮らせば、黒人でも白人でも日本人になることができた」

という日本人の定義も、(日本人は色々な国の食文化をアメーバーのようにに飲み込んでいくから、日本食を食べ、という項目はいらないんじゃないかな?)とは思うけれど、その他の点についてはおおむね同意ですね。


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