海猫亭日誌

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zoom RSS ピスタチオ 梨木 香歩

<<   作成日時 : 2011/10/04 22:26   >>

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規模の割には、お寺の多い町で育ち、祭りの時期には神社にお参りし、半被を着たまま夜店をひやかす子供時代を送ったせいか、どうも世でもてはやされているスピリチュアル志向が苦手です。

旅行のついでに神社巡り的な遊び半分のものはまだいいんですが、どこかにそういうものは消費するもんじゃない、という感覚があります。

自分の為に神様を利用するな、というか、手っ取り早く神に逃げるな。
自分で出来ることは自分でしろ。
安易に神に逃げていると本当に必要な時に必要な助力が得られなくなる。

上手く表現出来ないのですが、あえて言葉にするとそんな感じかな。この本を読んで心地よいと思ったのは、そういう私の志向とヒロインの行動が一致していたせいかもしれません。
読みながら何度か、安易なスピリチュアル志向にはまりそうになった時、その罠に陥らない為のヒントになりそうだな、と思う場面がありました。

「密猟や環境破壊などで動物達を絶滅に追い詰めていくのも、保護運動にやっきになるのも両方人間だ。そして両方のタイプに共通しているのは自分達が動物の命を『何とかできる』と思っている点だ。
そこには部族民が昔から動物に対して感じていたような自然な『畏れ』や『親しみ』はない。
そういう心性を未開のものとしてどこかでさげすみ軽んじるメカニズムの中で、或いはファナティックに尊重する極端さの中で現代人は否応もなく生きている」

ナショナル・ジオグラフィック・チャンネルを見ながら、そう思うヒロインが夢想する「畏れ」と「親しみ」を湛えた「ある種の秩序の中にある」ある筈のない国。

徹底して患者を客観視、モノとして観察し、相手の事情に巻き込まれないという方向へ邁進する西洋近代医療の流れとは正反対に、病を起こさせている悪霊を自分に呼び込んだり、患者に招霊したりして、どんどん内面に入りこみ、自他の区別をなくす方向に突き進むことで当事者の病を引き受けるアフリカの伝統医療。

体の機能が維持できなくなったら死ぬ。
それだけのシンプルな原則に従って死んでいくアフリカの犬と治療費を払ってくれる飼い主がいるという経済的な理由で生きながらえるヒロインの飼い犬。

日本とアフリカ。旱魃と洪水。部分と全体。気圧の変化により頭痛を引き起こす身体。何か、ではなく何かの部分である自分。

「屈辱とかプライドとか威張りたい欲求とか、生きものは、そんなものでも出来ている。そういうものを宥めたり、おさめたりする工夫として怒鳴ったり、泣いたり皮肉を言ったりという技を数々試みるのだろう。それは人間も他の生き物も同じ」
という畏れと親しみ。

洪水と旱魃はどちらも大きな流れの一場面。バランスを取ろうとする全体。

梨木さんの作品はどれも水のイメージが強いですね。

死者には物語が必要。それを抱いて眠る為の物語が。
呪医は語る。患者が本当に欲しがっているのはストーリー。特に人の怖ろしがる病気の場合は。何故自分がその病気になったのか、納得できる物語が欲しい。

「人の世の現実的な営みなど、誰がどう生きたかということを直感的に語ろうとする時、たいして重要なことではない。
物語が真実なのだ。死者の納得できる物語こそがきっと。その人の人生に振った雨滴や吹いた風を受け止めるだけの深い壁を持った物語が」

というのは印象深い言葉ですね。

自分自身の感覚で世界を測っていくタイプの「記録者」
地球をぐるりと廻る風。無数にまとわりついて地球を一つにする蛇。

梨木さんの作品は非常に感想が書きにくいです。言葉にしようとすると感じたことが逃げてしまう気がするので。

「ピスタチオは解き放たれたく、そして解き放ちたかった。遺失物係の鬱屈も。遺失物係の母の意固地も。自分の出会ったすべての人や物が在るべきように在るように」

「血が流れるように水が流れる。血の巡りが体質を変えるように、水は巡り巡って、ときに洪水を起こし、風も巡り巡って、時に渦を巻き、新しい大地を目指しているのだ。細胞が入れ替わるように古いものたちは死んでいく」

この物語を梨木さんが最後に入れたのは何故なのか?の理由は説明などなくても、とても納得できるような気がするのですけどね。


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