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zoom RSS 世界無宿の女たち 大場昇

<<   作成日時 : 2011/08/17 22:13   >>

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目次の次のページに世界地図があります。
アメリカ、ロシア、中国、インド、ベトナム、フィリピン、シンガポール、インドネシア、マレーシア、オランダ、エジプト、フランス、デンマーク。

それぞれの国のいくつかの都市に印がついています。

「イギリスの家に住み、中国料理を食べ、日本の女を妻にする」
 これが世界の男の夢だ、こういう言葉を何度か目にしたことがありますが、ジャパネスク趣味に走った外国人の言葉を日本人が身びいきからくる自慢で流行らせたんだろうなあ、と思ってました。
つまり、日本だけで言われている言葉で実際はそれほど世界で言われているわけではないんじゃないかなあ、と。

だって太陽の沈まない国と呼ばれ、植民地を多数持っていたイギリスと、どこに行っても中華街がある、と言われた中国なら、世界中どこに行っても
「ああ、あの人の国か」と具体的にイメージが浮かぶでしょうが、長い間鎖国を続けていた日本の、しかも女性を知っているのは日本を訪れた一握りの外国人だけでしょう。
いかにジャパネスクブームが凄ましかったとしても、「妻にするなら日本の女」という言葉に、異論を唱えず共感を持って頷くとまではいかないんじゃないかなあ、そう思ってました。でも、これ違っていたのでしょうね。

日本人の身びいき自慢ではなく、具体的な実感を込めて世界の男達は口にしていたのかもしれませんね。
「妻にするなら日本の女」と。

あちこちに印のついた目次の次のページの世界地図。印がついているところは、この本に出てくる女性達と縁があった国。

逆にいえば、この本に出てこなかった女性達が足を踏み入れた地は地図に印がないわけです。

それでも世界3大陸の中で、彼女達が足を踏み入れなかった地はない。
「妻に持つなら日本の女」と、世界の男達に知らしめたのは彼女達だ、という著者の言葉に嘘はないでしょう。

世界に30万人いたという“からゆきさん”と呼ばれた日本人娼婦達。

騙されて、かどわかされて、貧しい暮らしから逃れる為に、自らを売って、と様々な理由を背景に海を渡った娘たち。
その多くは旅券を必要としない密航で「あんな苦しいことは思い出したくもない」と、彼女達に言わせる船旅は旅の途中に命を落とす者も出るほど深刻なものでした。

経済的に弱い国の娘達が、生きる為に、家族を養う為に、国を後にするという光景は、この時代から変わっていませんね。
日本が娘達を送り出す国から、娘達を受けいれる国へと変わっただけで。

列強の支配のパターンが、キリスト教宣教師→軍隊→優秀な植民地官僚の到来なら、日本のパターンは娼婦や政商→軍隊→官僚だったわけで、
「妻にするなら日本の女」とうたった外国人達はジャパニズムブームにのせられた訳ではなく実際に知っていた彼女達をイメージして、この言葉を口にしていたわけですね。

まあ、確かに当時の他の国の男性が知っていた娼婦たちと比べたら(娼婦でなく、ただ貧しい階層の女性達と比べても)、からゆきさん達は「嫁にしたい」と思うでしょうね。堕落した階層の筈なのに(そういう階層に相応しい生活態度で日々を送っている筈なのに)、きちんとした生活態度を崩さない。

清潔、素直、契約はしっかり守って客の懐を狙うことはない。

男の夢見る“可愛い女”“都合のいい女”を体現しているようなことをやってますものねえ、からゆきさん達は。

娼婦をして稼いだ金を故郷の家族に送る、というのは解かるし、そのお金のおかげで家族だけでなく故郷の村全体が豊かになった、というのは解かるけど、日露戦争でも軍が現地のからゆきさんネットワークを利用して情報を手に入れていた、とは思いませんでした。

こういう話は教科書には載ることはないでしょうが、明治期の日本は経済的な面でも軍事的な面でも、かなり彼女達に助けられてますよね。

山崎朋子さんが、からゆきさん達について
「彼女達を外地に売った男は言った。『おまえ達の送る金で故郷は豊かになる。おまえ達のすることはお国の為になるんだ』その言葉は欺瞞ではあったが、厳しい生活を送る娼婦達の心の支えになった」
と、書いていましたが、実際娼婦達にとって、故郷の為に、日本の為に、という言葉は甘い蜜だったんでしょうね。
(今の時代から見ると、いや、それ搾取の為の言葉だから、もうちょっとシビアに世の中見ようよ、と思いますが、自分のやっていることが無意味だと思うより自分のやっていることが何かの為になると思いたい気持ちは解かりますので、彼女達が一途に純情に国に尽くしてしまうのは仕方ないのでしょうね)

山田風太郎が作品の中で、討ち入りを支える為に身を売り、性病で廃人同様になってしまった赤穂浪士の妻や妹や娘達にむかって大石内蔵助が頭を下げる場面を書いていたけれど(それに対して廃人同様の女達が「ご武運をお祈りしております」と返すのも凄ざましかったなあ)利用する為の言葉でなく感謝と謝罪を込めて
「おまえ達のすることはお国の為になる」
と言われたのだとしたら、まだ救われたのかしら。利用する為の言葉だとしたら最後まで騙し通して欲しかったとは思いますけどね。
世界無宿の女たち
文藝春秋企画出版部
大場 昇

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内 容 ニックネーム/日時
天草出身です。
明治
横浜で天草の人がイギリスの家で世話になり、お金も食事も
何不自由無く暮らしたとありました。
やはり、外国人は日本人(天草)を今で言う愛人とする
文化があったのでしょうか?

なな
2014/06/26 14:20

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