海猫亭日誌

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zoom RSS セルリアン小曲集   長岡良子

<<   作成日時 : 2011/06/19 23:27   >>

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「食うに米なく、作るに土地なく、長男以下の息子は兵隊に、娘は女工に。これが世界の一等国を目指す我が国の現状だ。そういう人達の目におまえ達の行動はどう映るのだろう?」

「だからといってまあ委縮することはない。それぞれの立場でそれぞれの信念を貫くほかないからな。私もできるだけ協力しよう。しかし、いいか修一郎、これをただの中傷とだけ受け取ってはいけない。世の人々の嫉妬と羨望と軽蔑を受けるに足る立場にいるのだということを高校生ならもう知っもいいはずだ」

アントワネット様に足りなかったのって、この客観性だよなあ。いくら無邪気で優しくて可愛い人だからといって、自分の立場を主観でしか見られない視野の狭さでは、ああいう結末に陥っても仕方ないよね、とベルバラを連想して思いました。

このシリーズ好きなんですが、文庫化しませんね。

大正時代、明治維新の荒波も無事乗り切り、豊かに暮らす大名華族の御曹司、宇島修一郎を主人公にした連作短編。

「海潮音」も「白虹事件」もこのシリーズで知りました。

「海のあなたの遥けき国へ こがれ憧れわたるかな」

文語体でなければ出せない詩情ってありますよね。

今読むと、この人のモデルは中村屋のボーズ、この人は生い立ちからいって土方巽かな?と実在の人物を色々想像出来て楽しいです。

掲載誌が無くなってしまったせいで、修一郎が大学生になったあたりで中断されていて、おそらくこのまま未完で終わるのだろうな、とは思うんですが、ちょうどそれぞれの転機がきたあたりで続きが読めなくなってしまったことが悲しいです。

社会的・経済的な意味でも、家庭的・愛情的な意味でも恵まれた家に育った主人公の明朗快活な素直さとシビアな社会背景のコントラストが好きでした。

冒頭の台詞は主人公が、なりゆきで先輩が主催する劇団の芝居に参加することになった時、その劇団を取材した記者が
「世の困窮をよそに遊蕩に飽きた名門の子弟など芝居を口実に素人娘を弄ぼうとしている」
という記事を書いてしまうんですね。

まあ、大正時代の大衆紙なんて、真実よりも売り上げ。いかに一般に受けるかの方を重要視していたそうなので、それを踏まえているのかもしれませんが。

で、そういう記事が出た為、親に芝居への参加を止められるものも出てきて、みんな真面目に演劇芸術を志しているのに、何故こういう記事が出たのか、と主人公は叔父にむかって訴える訳です。

その訴えに対し、主人公よりも世の中のことをよく知っている叔父は
「こんな歌を知っているか?」
と主人公にむかって一つの和歌を返すのです。
「豊葦原瑞穂の国に生れてきて米が食へぬとは嘘のような話」


その後、冒頭の台詞を続けるのですが、主人公の言葉に是も否も唱えない。
ただ別の視点を提示することで、主人公に考えさせる叔父様の大人さが素敵でした。(この叔父様、軍人としてシベリア出兵への参加を志願して、大陸に渡ったところまで描かれているのですが、そこで話が中断しているんですよね。あの後どうなったんだろう?)

そういえば頭山満を知ったのもこのシリーズでしたね。脇役とはいえ、右翼の大物が出てくる少女漫画(しかも悪役ではなく、けっこう魅力のある人物として描かれている)なんて、今の時代ではきっと無理でしょうね。

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