海猫亭日誌

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zoom RSS 黄泉の犬 藤原 新也

<<   作成日時 : 2011/06/13 21:38   >>

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斜め読みや雑誌に載っている文章を読んだ事はあったけれど、まともに藤原新也を読んだのはこれが初めてじゃないかな。

非常に身体感覚が明瞭な人ですね。読みづらい文章を書く人だけど(そう私が感じただけでしょうが)、文章に力があるのはそのせいなのかな。

文章に書いた人が出るというのは本当かもね。「A3」つながりで読みました。麻原水俣病説について、この本で言及していると書いてあったので。

二人とも可能性についてあげているだけで断定はしていませんね。ただ事実はどうあれ、麻原が自分のことを認定されなかった水俣病患者だと考えていたとしたら(たとえ、それが誤認であったとしても)そのことが彼の行動に影響を与えたということはあったかもしれない、と思いました。

この本と「A3」と2冊続けてオウムに関連する本を読んだのですが、それぞれの興味の違いが現れていて面白かったです。

「なぜ、オウムはあの事件を起こしたのか?」
 と、いうことについて知りたいのなら「A3」だと思います。

「なぜ、一流と言われる大学を出た優秀な人材がオウムにはまっていったのか?」
ということを知りたいのなら、こちらの方かと。

森達也がオウムという媒体を通して変容していった社会と社会のシステム、その暴走の過程に興味があるのだとしたら、藤原新也の目は宗教と救いと個人の弱さを見ているのかな、と思ったりしました。

あと、自分の中に規範がある人は騙されないな、と。

自分でも書いているように、自然があらかじめ持つ規範への写実行為がヒンディズム思想の(インドで生まれた仏教の)根幹を成しているのだとしたら、インドを旅する間、出来るだけ目の前い現実や自然に関わるようにしながら旅を続けることで、この人はその規範を己の中に身につけていったのでしょう。

宗教が人間生活の規範となり、人の心を支配する力を持っていることを知っているからこそ、救いとしての宗教と権力としての宗教を区別し
「ひとり旅の僧は信じるが、教団を組織した宗教者は信じない」
というスタンスを持つ。オウムから会いたいという電話があった時は
「もし麻原さんが会いたいなら側近を通しでではなく自ら電話をかけてくるべきでしょう。私は人に会いたい時はそうします」
と、答える。それが試しであったことに電話をかけてきたオウムの人間は気づいていたのか。

おまえは宗教者なのか、それとも単に権力や体制に依存しなければ生きていけない人間なのか?そう問われていたことに。

あまりにも個が弱い。現実の重さを直視出来ず、自分の領域と外部との間に堅牢なバリヤを作り、自分に都合のいい夢ばかりを見ている。

「君は浮いた。そう言い張るなら、たぶん浮いたんだろうな。で、それがどうしたんだ?」

この言葉に言い返せないようなら宗教なんてやるな、と個人的には思います。
ライト兄弟が人に馬鹿にされながら、それでも空を飛びたいと飛行訓練を続けた思いとは違うんだもの。

空中飛行出来る自分は凄い、と、人より優位性を保ちたいが為にそう言い続けるいじましさが嫌だ。
富士山は誰が見ても富士山。権威でも象徴でもなく、誰かがそれを利用しても、それは山のあずかり知らないところ。富士山は日本一高く美しい。

宗教をやっているなら、そういう感覚を、そういう心持を目指せばいいのに。そうじゃないのね。

「親達は戦後、ひたすらな“生産工場”以外のなにか、人間的な美しい家族や人間の関係というものを子供達に教えてこなかったのである。

これを読んで宮迫 千鶴さんの言葉を思い出しました。
「私の父は世間で言うところの敗残者でした。しかし父には美学がありました。こういう行為は人として美しくない。そういうものを父は持っていたように思えます」

自分には父がいないと書いてきた青年とのこの言葉の違い。これはいったいどこからきているのでしょう。

負の状態の人間から意味を読み取る寛容さと強さが欠けている。

だから、ここでもないどこか、を求めるのか。どこにもないどこか、を。

神秘志向と現実回避。自分の身体感覚するも仮想化される時代。膨大な欺瞞がこの日本を被い尽くしているとしても
「自然の持つ聖性というものがいささかも傷ついたということにならない。自然原理の中には依然として人間や動物の行動を制御する規範が存在している」

「いかなる極限状況においても、素面であり、平常心を保つ強靭な精神が宗教者には求められる」

今更、と言えば今更な言葉ですが、この文章を読んだだけでこの本を読んだ価値があったな、そう思いました。



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