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zoom RSS 消えた宿泊名簿 ホテルが語る戦争の記憶  山口由美

<<   作成日時 : 2011/05/02 23:22   >>

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ジェントルマンがジェントルマンたるのは、どんな時でもジェントルマンであろうとするその意志の強さだ、という言葉を聞いたことがあるのですが、ではホテルがホテルたるのは、どんな時でも、そこに行けば快適な空間に上質な食べ物や飲み物があり、心地よいサービスが受けられるという幻想を満たそうとする人々がいるからかしら?そんなことを思いました。

インドを旅行した時にせっかくだから日本では出来ない経験を、とマハラジャホテルに泊るツアーを選んだのです。

なるほどお釈迦さまが出家する訳だわ、と妙なことを思いました。ホテルの中と外では別世界。インドだから、と用心して日本からミネラルウオ―ターを持っていったのですが、その必要まるでなし。

この綺麗で快適な空間しか知らなかった王子様が中と外の違いを知ったら、そりゃショックを受けて出家したくもなるでしょう。

外がどんな嵐が吹き荒れようと、そこだけは快適な空間が保たれているのがホテルなら、その場所で様々なドラマは繰り広げられているのも無理はないでしょうね。

華やかな光輝く空間で生まれたドラマだからこそ、光を浮き立たせる闇が引き立つのでしょう。

日米開戦前、密やかに続けられた和平交渉。

毛皮のコートやショールを纏い、穏やかで柔らかな微笑みを浮かべ「昭和二十年一月一日」という日付の集合写真に映る人々。

終戦後、亡命先の奈良ホテルでGHQの将校に逮捕されたフィリピンの大統領が
「何故、あなたは日本人の為に働いたのですか?」
という質問に答えた言葉。
「中佐、あなたはハーバードで私はイェールだ。私達は球技で競い合っても、どんな問題を熱心に論議しあっても、お互いを讃え合うことが出来る。だが、この基本原則だけは認めあわなければいけないのです。
すなわち、私はあなたがアメリカ人よりもフィリピン人を愛することを期待すべきではないし、同じようにあなたは私にフィリピン人よりもアメリカ人を愛することを期待すべきではない。
そしてこれは私達hが起こしたのではない戦争の間、私が当てはめた基本原則でもありました。戦争は起こってしまったのです。
そしてアメリカも予期しないことに私達は日本人に占領されました。私には選択肢がなかったのです。
私達の人民を守る為に少なくとも敵の占領による影響の緩衝材となる為に私は出来る範囲のことをしなければならななかった」

この言葉は大統領の息子が語る
「彼らは自分達が敗北を受け入れられないことに気がついたのだ。だって日本人は二千年以上も誰にも征服されたことがなかったのだから」
という言葉とともに印象に残ります。

数百年にわたって様々な国に征服され続けてきた国の少年が見た敗北に呆然している日本人は、歴史上初めて他国の支配を受けることとなり、占領下の接収ホテルの人間は敗戦国の人間でありながら、国を占領する勝者の側の車に乗ることとなる。

接収ホテルの中で育った著者のお母さまの話で連想したのが浜のメリーさん。

戦後横浜の街にあふれた娼婦達は、接収ホテルのマスコットガールと同じく、皆が飢えに苦しむ時代にそんなこととは縁のない暮らしをしていました。

違っていたのは彼女達が身を売る悲しみを合わせもっていたのに対し、守るべき愛らしい存在として愛情と豊かさだけを与えられる立場だったこと。

飢えにも悲しみにも、接収ホテルのオーナーとしてかつての敵に仕えなければならなかった父親の屈辱と苦悩にも、縁がなかった彼女は世の中と反比例するように生活の中から光を失っていくことになる。

誰からも悪意を受けなかったことが彼女の不幸、とはよく言ったものです。接収ホテルの存在を象徴するような女性でしたね。

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